青のなかをもぐる

オノマトペだけで通じあえたらいいのにね

指の混ざり 頬の香り

祖父の家に切り花がたくさん届いたので、いくつかもらった。それを部屋に飾って、家の中で「休憩しよう」と思うたびに撮影した。家でずっと仕事をしていると、一息つこうと思ってもすでに休んでいたような感覚になる。花を撮るのは丁度いい気分転換になる。

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わたしは花を人のように見てしまう癖があって、この花も寄り添う恋人のような気がしている。画全体に対して花に近付きすぎていて、良い写真とは言えないかもしれないけど。

近付きすぎるとよく見えない。最近考えていることはそんなことだ。

他人と同じチームになること、家族になること。近くにいると、相手の性質が自分にも移る。同じように、相手にも自分が移っていく。そうやって反射していく、愛おしい営みが、たまに不安になる。不安になるのは自分に自信が持てないからなのだけれど。他人は自分ではないはずなのに、自分と似た部分が多くなりすぎて、まるで自分を映しているような気がする。嫌なところを見つけると、それも自分を映していると思い込んで、傷つけたり傷ついたりする。

ずっとそばにいて、考え方や仕草が重なり合っていくことは嬉しくて、でも相手が変わってしまうようで少しさみしい。そんなふうに考えてしまうのは、傲慢だろうか。一人はやっぱり気が楽だ。それでもわたしは結局、誰かと一緒にいることを選んでいるからそういう性格なのかもしれない。ないものねだり。


まあでも。そもそもあまり心地よく暮らせていないのかもしれない。日記は書いているけど、好きな音楽を聞いたり、好きな洋服を買ったり、そういう自己表現が足りてないのか。歳を取っていくことって難しい。意識して何かしないと、体も疲れやすくなるし。「わたしのこの腕時計ほんとに素敵だな」って気持ちだけでは生きていけなくなっていく。とはいえ、かわいい色のノートを買ったらしばらくわくわくするし、そういう偶発的な購買活動は必要、贅沢は味方。


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逃げ恥再放送を楽しみにして生きている。星野源「恋」が改めて好きだ。
3年前は特に「揺れる笑顔も」という歌詞に心を震わせてたんだな。そもそも逃げ恥って、3年前なのかあ。当時は今よりはちゃんと見ていなかった気がする。
limon3.hatenablog.com

「泣き顔」「黙る夜」の対比としての「揺れる笑顔」。過去には「グー」という曲もあって、その曲の対比もうまい。

「恋」の歌詞は音と言葉の組み合わせが絶妙で耳障りがいいから、よく読んだことがなかったけど、文字で追ってみるとぱっと理解できない箇所がいくつかある。

恋をしたの貴方の
指の混ざり 頬の香り
夫婦を超えてゆけ

「指の混ざり」、手をつないでいることを表す、星野源らしい言葉だなと思う。でも、貴方の、に続くなら、横顔とか後ろ姿とか、もっと固有のなにかが適切なはず。「貴方の 指の混ざり 頬の香り」はどういう意味なんだろう。ってずっと考えてた。

逃げ恥6話で、新婚旅行という名の社員旅行に向かった2人は、帰りの電車の中で正反対のことを考える。みくりは「自分から行動することに疲れた、もうやめにしよう」と気持ちに蓋を閉じようとするのに対し、平匡は「自分はみくりのいろんな表情を知っている」と気持ちを再確認する。真逆な思考回路のなかで「あと一駅、永遠に着かなければいいのに」という気持ちは重なり、とても素敵なシーン。

ドラマを見て号泣しながら(気持ちが重なる瞬間にわたしは弱すぎる)、この歌詞は、あなたの横顔が可愛いくて大好き、とかそういうレベルの歌詞じゃなかったんだって思った。つないでくれた手のぬくもり。抱きしめたときの安心感。歌詞の「貴方の」に続いているのは、優しさや愛情ということになる。すごい歌詞だ、と勝手に納得して、更に泣けてきてしまった。



言葉を持ち歩いていると、生活の中でふわっと花が開くように、思い出して深く理解できる瞬間がやってきたりする。そうやって味わえるから、詩はすごい。