青のなかをもぐる

オノマトペだけで通じあえたらいいのにね

ただ 今は思い出すだけ

思い出してばかりいる日がある。


サカナクション「ナイロンの糸」

このまま夜にかけて
多分少し寒くなるから
厚着で隠す あの日のこと

この部分、すごく懐かしい気持ちで聞いていたんだけど、きっと北海道にいるときの歌詞なのだろうなと想像する。「(この町のこの季節ならいつも)このまま夜にかけて多分少し寒くなる」という意味だと思う。この言葉を無意識に頭の中で補いながら、そう思っている。
ずっと同じところに住んでいると、郷愁に憧れたりする。この街の夏はひんやりとしている。別の場所に1か月もいると、その肌の冷たさが懐かしくなって、結局わたしはここにいるのかもしれない。
サカナクションの山口さんは釣りが好きだから、振り返れば海があるんだろうな。波は寄せて返すから、揺れながら記憶を映し出す。わたしは数年後、この狭い部屋のことを思い出すのかなあ。大体暗いけど時々日の入る部屋。いつか窓の大きな眩しい家に越したいと思っているから、そうなったら思い出すだろう。数少ない日差しのありがたみの暖かさのこと。やっぱりいつも傍にあると忘れちゃうよね。

834.194



〇△▢


坂元裕二のリモートドラマ「Living」を見た。好きな言葉が散りばめられていた。
阿部サダヲ演じる作家に話しかけるドングリが言ったセリフがね、ちゃんと思い出せなくて。「思い出はいつも未来の中にあります」ってノートにメモしてあるけど、これ、逆の「未来はいつも思い出の中にあります」のほうが感覚的に正しいんだけど・・・

思い出は過去だから既に存在していて、そこに未来を見出すことができる。「いつも」ならなおさらそっちのほうが正しいような気もするから、メモが誤っているかも
ただ、思い出がいつも未来の中にある、って、未来が過去の部品から構成されているようでそれもそうかもしれない。考えていくとそっちのほうがなんだか嬉しい気もするな


〇△▢


昨日の玉置浩二ショーで、小林薫が言った「どこか素朴で素人っぽい部分が残されている方が心が掴まれる」という話がとてもよかった。芝居や音楽はやるほど職人のように巧くなってしまうけど、そうじゃなくて受け手の心を掴みたいという話。



考えれば考えるほど、わたしは自分ならではの技術や存在感を何も持っていないな。それでも楽しいと思うことがしたいし、何かを頭で好きだと思う前の心の震えや驚きを忘れたくないと思ってる(よく忘れちゃうけど)。
だからってなにもしないと素人のままだから、きっと練習のその先の話なんだろう。玉置浩二はめちゃくちゃ歌がうまいし、小林薫もずっとそこにいるみたいに自然な俳優だ。型が完全に体に染みついて、没頭しているときに現れる性質ってとても強いものだから、わたしみたいなぺーぺーはまずは何かを繰り返し覚えていくところから。